memo

ゲームと好きキャラの話がほとんどだよ

島の子SS

すごく久しぶりに文章を書いてみたくなったので、書いたよ!

小ネタ漫画だとちょっぴりアホの子一直線な羅姫ちゃんの、すこしクールで頭のいい雰囲気が出てるといいなっ。

 

去年は紅葉見に高尾山登ったけど、今年は行けないかもなので、すごく行きたい欲求が題材に出ました。

 

 

 

 紅葉

 

 

軽く乾いた感触が頬にあたり、目を開くと視界一面が赤だった。
綺麗なものじゃと一息つき、背を伸ばす。
眠りから覚醒させた赤い葉を指で弄び、身を起こすと周囲を見回した。
紅葉した木々が、山の方まで遠く続いている。
子供の頃から見慣れた、美しい森の秋の風景。
この赤く染まった森を木の上で眺めるのが、羅姫は昔から大好きだった。
いつ大人に成長できるかわからないこの忌々しい小さな身体も、木の上で昼寝をするには都合が良いのだから皮肉なものだ。

 

木の枝に腰を下ろし、足をぶらぶらと遊ばせ、思考を巡らす。
今日摘んだハーブをお茶にするのに、いつ天気が良さそうだろうとか、そういえば喉が渇いたなとか、ハーブとかを売った資金で次はどこの国に旅してみようかな、とか。

 

「羅姫ちゃぁーん」

 

ずいぶんと必死な様子の声が、木々の奥から聞こえる。
どこかの国に旅するときは必ず一緒についてきてくれる、心強い幼馴染、伊紗那の声だ。

 

「わらわはここにおるぞ!木の上じゃ!!」
息を吸い込み、手を口元に当て、大きめの声で言う。
普段は遠くの獲物も敏感に察知する優秀な狩人の幼馴染は、かなりの過保護なようで、羅姫絡みの事となると少々冷静さを失うところが多い。
おそらく木の根元に置きっぱなしの収穫籠にも気づかず、猛ダッシュで通り過ぎてしまいそうで。
それは数年前、羅姫がこの森で行方不明になり、身体の成長が止まる呪詛を何者かにかけられたことが、関係しているのだろうか。

 

(わらわが逸れたとき、森で一緒にいたのに責任を感じたか、益々過保護がひどくなったわ)

 

申し訳なさはあるが、その健気さを好ましく思う気持ちで、口元に笑みが浮かぶ。
そうこうしてるうちに、声を聞きつけた伊紗那が、木の下までたどり着いた。

 

「羅姫ちゃん、そんなところ危ないからあ。もう陽が沈むから帰ろう〜」

木の下で両腕を大きく広げ、見慣れたボリュームのある長髪がふわふわと揺れる。
伊紗那のその体勢を見るに、どうやら下でキャッチするから枝から飛び降りろ、と言うことらしい。
(ああなったら、伊紗那は言うことを聞かぬ。飛び降りるしかないか)

 

「今、降りるから、頼むぞ」
「もちろん。任せて〜」

木の枝を手のひらで押し、飛び降りる。
短時間の浮遊感の後、お姫様抱っこのような格好で、無事に伊紗那の腕の中に着陸することができた。

 

「遅いから迎えにきたのよ?」
「うむ。陽が暖かく紅葉もきれいなので、すこし眠ってしまったようじゃ」
「そうかあ。今週あたりが一番葉が赤くて素敵だものねえ」

幼馴染の腕に抱き上げられ、共に見る紅葉も悪くはない。

 

「あ、籠を忘れてはならぬ。今日のわらわの獲物じゃからな」
「これえ?あ、ハーブね。言ってくれれば一緒に摘んだのに…」
羅姫の身体を片腕で抱き直すと、伊紗那は空いた方の手で籠を拾う。
わらわは小さな犬猫か、はたまたどこかの国で見た紙袋に入れたおしゃれな長いパンのような抱えられ方じゃ!と心の中でツッコミを入れたが、下ろしてくれと頼んでもたぶん笑顔で却下されそうなので、楽だしまあいいかと考えることにした。
「伊紗那は縫い物をしてたではないか。仕事の邪魔をするようなわらわではないぞ」

 

東鬼島の鬼たちは自給自足の共同生活をしつつ、各自得意な分野で商品を作り、月に数回訪れる船で他国の商人と族長を通して商売をし、外貨を得ていた。
それは島で手作りするには手間のかかるものを輸入したり、年頃の鬼の娘が婿取りのために他国へ旅をする資金として使われたりする。

 

羅姫は母親から教わったハーブ調合の知識を活かし、ハーブティーを作ったり、最近は美容にいい入浴剤も手がけていて売り上げも上々。
伊紗那は裁縫が得意で、オーダーメイド品を頼まれるほどの腕前だ。

 

当番制で森で狩りをしたり、海で漁をしたり、皆で得た食料で夕食を大勢で取る。
賑やかで、自由と規律がしっかり定められている島の暮らしを、羅姫は気に入っていた。
この自然豊かで、うつくしい森や海のことも。

 

(母上のような立派な部族長になり、島を守って天命を終えるのが、わらわの何よりの望みじゃ)

 

はらりと落ちる葉に、手を伸ばし、手のひらで受ける。
「このようにうつくしく染まり、時期が来れば朽ちたいものよ」
「羅姫ちゃん、なんの話?」
「…いいや。明日も当番は特になく、ヒマじゃ。急ぎの用事がなくばわらわと一緒にのんびり紅葉狩りでもするか?」
羅姫の誘いを聞くと、伊紗那の目はきらめき、頬は紅葉のように赤く染まった。

 

「わぁうれしい!今夜かまどの火が消される前にパンを焼くわあ。とっておきのチーズも出して、お弁当にサンドイッチを作るから楽しみにしててね♡」

 

とびきりの笑顔を浮かべる幼馴染の顔を横目で見つつ、明日のスペシャルサンドを期待してか、羅姫の腹は小さく鳴った。